【戦略コラム】あなたの戦略、「逆算」できてますか? それ、コストをドブに捨てる「逆願」かもしれません。

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私は(戦略設計のプロフェッショナル)

「施策は大量に動いているのに、なぜか成果に繋がらない」 「会議で決まることが、いつも場当たり的に感じる」 「競合が始めたから、ウチも慌ててSNSアカウントを開設した」 「上司が『これからはSEOが大事だ』と言っているから、とにかく記事を量産している」

もし、あなたの組織でこのような光景が繰り広げられているとしたら、深刻な病に侵されています。それは、貴重なリソース(ヒト・モノ・カネ)をドブに捨てるに等しい行為です。

なぜ、これらの施策が失敗するのか? 答えは明確です。それらが、目標から論理的に導き出された「逆算」ではなく、客観性を失った「逆願」に基づいているからです。

「競合がやっているからウチも」 「上司が言うからやる」

これは、私(戦略設計のプロフェッショナル)から見れば、思考停止以外の何物でもありません。本来の目的である「事業の勝利」ではなく、「競合に追いつくこと」や「上司の機嫌を取ること」が目的(終着点)にすり替わってしまっています。

本記事では、戦略設計のプロとして、あなたの会社の貴重な「お財布」と「リソース」を守るため、「逆算」と「逆願」を明確に見分ける方法、そして「逆願」の呪縛から逃れ、「逆算」に基づいた真の戦略を立てるための処方箋を、徹底的に解説します。


第1章: あなたの戦略はどっち? 「逆算」と「逆願」の決定的な違い

まず、二つの言葉を明確に定義しましょう。この二つは、似ているようで、思考のスタート地点が180度異なります。

「逆算」とは: 論理と数学に基づく「計算」である

「逆算」とは、戦略的思考の核となるプロセスです。 これは、**「論理」「数学(計算)」**に基づいています。

  1. 「終着点(KGI)」を客観的に定義する。
    • 例:「2年後に、事業Aの売上を3億円(現状比150%)にする」
  2. 「現在地」を客観的に定義する。
    • 例:「現状の売上は2億円。リソースは予算年間5,000万円、担当者3名。市場シェアは10%」
  3. 2点間のギャップを埋める「最短・最適ルート」を導き出す。
    • 例:「売上1億円のギャップを埋めるには、LTV(顧客生涯価値)を20%改善し、新規顧客を30%増やす必要がある」
    • →「LTV改善のために、まずは既存顧客のリスト化とCRM(顧客関係管理)にリソースの50%を投下する」
    • →「新規顧客獲得のために、最もROI(投資対効果)が高いと見込まれるニッチなSEOとSNS運用にリソースの50%を投下する」

これは、高性能なカーナビゲーションシステムに似ています。 目的地(終着点)と現在地を正確に入力すれば、AI(論理)が過去のデータ(数学)に基づき、渋滞(市場環境)やガソリン残量(リソース)を考慮した最適ルート(戦術)を弾き出します。

このプロセスには、「こうなったらいいな」という希望的観測が入る余地は一切ありません。すべてが「計算(算段)」によって導き出されます。

「逆願」とは: 希望と思い込みに基づく「願望」である

対して「逆願」とは、戦略の顔をした単なる「願望」です。 これは、**「感情」「思い込み(バイアス)」**に基づいています。

  1. 客観的な分析(終着点・現在地)が欠落している。
  2. 「こうなったらいいな」「やるべきだ」という希望や焦燥感が思考の起点になる。
    • 例:「競合がSNSでバズっている。ウチもバズりたい(願望)」
    • →「だから、SNSをやるべきだ(思い込み)」
    • →「とりあえずアカウントを作って、担当者に毎日投稿させよう(場当たり的な施策)」

これは、壊れたコンパスに似ています。 自分がどこにいるかも、目的地がどこかもわからないのに、「なんとなくこっちが北(=成功)だろう」という願望を指し示すだけです。その方角に進んで辿り着ける保証はどこにもありません。

「逆算」が「計算(Calculate)」であるのに対し、「逆願」は「願掛け(Wish)」です。 ビジネスはギャンブルではありません。貴重なリソースを「願掛け」に浪費してはならないのです。


第2章: なぜ「逆算」は「逆願」にすり替わるのか? 恐るべき3つの罠

「そんなことはわかっている。ウチは逆算しているつもりだ」 そう反論する方も多いでしょう。しかし、多くの組織が、無自覚のうちに「逆算」のフリをした「逆願」に陥っています。

なぜ、論理的であるはずのビジネスシーンで、このような非合理がまかり通るのか。それには、人間と組織が持つ、根深い「3つの罠」が存在します。

罠1:「終着点」のすり替え(目的地の幻影)

最も多く、そして最も深刻な罠がこれです。 本来の終着点(=事業のLTV最大化、顧客への価値提供)を見失い、別の何かが「仮の終着点」にすり替わってしまいます。

  • (NG例)「競合A社がやっているから、ウチもやる」
    • これは「一番あほなやつ」と議論で出ましたが、戦略的に解説します。
    • これが「逆願」である理由は、自社と競合の「前提条件」を完全に無視しているからです。
    • 競合A社がその施策(例:大規模なSNSキャンペーン)を打つのには、A社なりの「逆算」があります。
    • 例えば、A社は「潤沢な予算(お財布)」「強力なブランド力(既存資産)」「専門の運用チーム(リソース)」を持っているかもしれません。その前提で、「新規層へのリーチ」をKGIに設定した最適解(逆算)が、そのキャンペーンなのです。
    • 一方、リソースもブランド力もない挑戦者が、A社の「表面的な戦術」だけを真似しても、同じ成果は絶対に出ません。
    • この時、あなたの組織の「終着点」は、「事業の成功」から「競合A社に追いつくこと」という幻影にすり替わっています。
  • (NG例)「上司(あるいは社長)が『やれ』と言っているからやる」
    • これも同質です。本来の終着点(顧客・市場)ではなく、「上司・社長(社内政治)」を向いて仕事をしている状態です。
    • この時、施策の成否を判断する基準は「売上が上がったか」ではなく、「上司が満足したか」になります。
    • これは「逆算」ではなく、上司の「逆願」に応えるためだけの「作業」です。もしその上司が客観的な「逆算」に基づいて指示を出しているのであれば問題ありませんが、多くの場合、上司の「逆願」(「他社がやってるぞ」「何か新しいことをやれ」)であることが大半です。

罠2:「現在地」の認識エラー(希望的観測バイアス)

客観的・冷静な判断が欠如し、「現在地」の測定が狂ってしまう罠です。 人間は誰しも「自分(たち)はイケてる」と思いたい生き物です。これを「希望的観測バイアス」と呼びます。

  • (NG例)「うちの製品は(根拠なく)素晴らしいはずだ」
    • 「だから、広告さえ打てば売れるはずだ」という「逆願」につながります。
    • しかし、市場調査やNPS(顧客推奨度スコア)などの客観的なデータを見れば、顧客は「価格が高い」「使いにくい」と感じているかもしれません。
    • この「現在地」の認識エラーを無視して広告(戦術)を実行しても、お金が溶けるだけです。正しい「逆算」なら、「まずは製品改善(LPOや機能改修)から着手すべきだ」となるはずです。
  • (NG例)「うちのSNS担当者は(なんとなく)優秀そうだ」
    • 「だから、彼に任せておけばバズるはずだ」という「逆願」です。
    • 「優秀そう」とは何でしょうか? その担当者のスキルセット(分析力、ライティング力、動画編集力)を客観的に棚卸ししたのでしょうか?
    • もし彼(彼女)の強みが「X(旧Twitter)のテキスト運用」であり、会社の戦略が「TikTokでの動画マーケティング」なら、リソース(ヒト)の配分がミスマッチです。
    • 「現在地(=自社リソースの正確な棚卸し)」を間違えると、戦略全体が崩壊します。

東京駅(現在地)にいるのに、GPSが狂って「今、大阪駅にいる」と表示されていたら、そこから導き出される東京タワー(終着点)へのルート(逆算)は、すべて無意味になります。これと同じことが、ビジネスの現場で起きているのです。

罠3:「プロセス」の信仰(ROIなき精神論)

これは、特に「まじめな」企業や担当者が陥りやすい罠です。 「頑張ること」「継続すること」自体が目的化し、「計算(算段)」を放棄してしまう状態です。

  • (NG例)「とにかく毎日投稿すれば、いつかバズるはずだ」
  • (NG例)「良い記事を書いていれば、いつかGoogleは評価してくれるはずだ」

一見、正しい努力のように見えます。しかし、これらは「逆願」です。 なぜなら、戦略の核である**「ROI(投資対効果)」**の計算が抜け落ちているからです。

ビジネスは、学校の部活動ではありません。「頑張ったで賞」は出ません。 投下したリソース(時間、人件費)に対して、どれだけのリターン(売上、リード獲得)があったかを冷徹に「計算」する必要があります。

「いつか」という言葉は、戦略家の辞書にはありません。 ビジネスには「時間(キャッシュフロー)」という絶対的な制約があります。「いつか(=5年後)」評価されても、会社が「明日」潰れては意味がないのです。

  • 「毎日投稿」というプロセスにいくらコストがかかり(現在地)、
  • それが「いつまでに」「いくら」の売上(終着点)をもたらすのか。

この「計算」を放棄した瞬間、それは「逆算」ではなく、「プロセス」の実行自体を目的とした「逆願(=精神論)」に堕落します。


第3章:「逆願」を「逆算」に変えるための、現実的な処方箋

では、どうすればこの「逆願」の呪縛を断ち切り、真の「逆算」に基づく戦略を実行できるのでしょうか。 戦略設計のプロとして、明日から会議で使える、具体的かつ現実的な「処方箋」を提示します。

Step1:「お財布(予算)と裁定者」を直視する(=現在地の確定)

これが全てのスタートラインです。「もし予算が無尽蔵なら」といった仮定の議論は、時間の無駄です。

  • 「お財布」の限界を定義する
    • 「このプロジェクトに使えるお金は、今期、いくらまでか?」
    • 「失敗した場合、いくらまでの損失なら許容できるか?」
    • この「あるお金でできること」の範囲内だけで、思考を組み立てます。これにより、施策は必然的に絞り込まれます。
  • 「裁定者(決裁者)」の価値観を分析する
    • あなたの上司や社長は、何を重視する人物ですか?
    • 「短期的な成果(今月の売上)」を求めるのか、「長期的な投資(来年のブランド構築)」を理解してくれるのか。
    • これも、動かせない「現在地」の一部です。
    • たとえ長期投資が「正解」でも、裁定者が短期成果を求めているならば、その「制約条件」の中で、「短期の成果を出しつつ、長期の布石を打つ」というハイブリッドな「逆算」を設計する必要があります。
    • これが「プレゼンターが何を主張するかの話(=戦略設計)」です。

Step2:「終着点」を、願望の入り込めない「数字」で定義する(=目的地の確定)

次に、その「お財布」でどこを目指すのかを決めます。 ここで「逆願」が入り込む隙を徹底的に排除します。

  • NG(逆願):「売上をアップさせる」「ブランド認知を高める」「顧客満足度を上げる」
  • OK(逆算):「予算5,000万円を投下し、1年後までに、このセグメントからの売上を1.2億円(+2,000万円)にする」「半年後までに、指名検索数を現状の3倍にする」「LTV(顧客生涯価値)を10%改善する」

なぜ数字で定義するのか? それは、「計算(算段)」のベースになるからです。「売上アップ」では計算できませんが、「売上+2,000万円」なら、「客単価5万円だから、あと400件のコンバージョンが必要だ」と計算できます。 「計算」こそが、「逆算」の心臓部です。

Step3:「戦術」をテーブルに並べ、ROI(投資対効果)で比較する(=最適ルートの選定)

現在地(お財布)と終着点(数字のKGI)が確定したら、初めて「どうやって行くか(戦術)」を考えます。

  • SEO、SNS、Web広告、PR、リストマーケティング、イベント開催…
  • 考えうる全ての「戦術(ルート)」をテーブルに並べます。
  • そして、すべての戦術を「100万円投下したら、どのくらいの期間で、いくら(あるいは何リスト)になって返ってくるか」という、共通の“算盤”の上で比較検討します。

これが、プロの「逆算」です。

  • 「SEOは立ち上がりに1年かかるが、資産性が高く、2年目以降のROIは300%が見込める」
  • 「広告は即効性があるが、CPA(顧客獲得単価)が高騰しており、ROIは80%(赤字)だ」
  • 「SNSは運用工数がかかる(人件費)が、ニッチなターゲット層に刺されば、ROI 150%が狙える」

このように、過去のデータ、市場のベンチマーク、類似事例から「期待値」を算出します。 そして、自社の「お財布」と「リソース」の状況に照らし合わせ、最もROIが高く、かつ「終着点」に到達できる確率が高い戦術(あるいはその組み合わせ)を選び抜くのです。


結論: 戦略とは「願うこと」ではなく、「計算すること」だ

あなたの会社は、「戦略」という名の「願掛け」に、貴重なリソースを浪費していませんか?

「競合がやっているから」 「バズるかもしれないから」 「いつか報われると信じているから」

それらはすべて、客観性と論理性を欠いた「逆願」です。

真の「逆算」とは、冷徹なまでに客観的です。 「裁定者」と「お財布」という現実(現在地)を直視し、「数字」で定義されたゴール(終着点)に向かって、ROIという「計算」に基づいた最短ルート(戦術)を設計すること。 それは、非常に地味で、泥臭く、そして時に痛みを伴う作業です。

しかし、これこそが戦略設計のプロフェッショナルとしての仕事であり、ビジネスという不確実性の高い航海において、唯一、成功確率を高めることができる羅針盤なのです。

明日からの会議で、あなたの発言はどちらになるでしょうか? 「こうなったらいいな」という「逆願」ですか? それとも、「こう計算できるから、これをやるべきだ」という「逆算」ですか?

あなたの会社の「お財布」の未来は、その選択にかかっています。

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